焼酎業界においてとても喜ばしいニュースが今月に入りました。
大海酒造、大牟禮良行杜氏が「現代の名工」という素晴らしい賞を受賞されました。
本当におめでとうございます!!
現代の名工を簡単に説明すると、
分野は問わず厚労省が日本の職人さんに与える最高の賞といったところです。
長きに渡るその業界における貢献度、
そして蓄積された技術がなければ得られないものです。
焼酎の歴史は500年以上続いていますが
500年間で大牟禮杜氏で5人目だと記憶しています。
過去受賞された杜氏も大変すばらしい御方ばかりですが
今回の受賞はなんて言いますか、
僕にとっては「光」みたいな感じで捉えてしまいました。
このコロナ禍で酒造業界全体が大打撃を受けた中、
とても明るいニュースとしての一面があります。
そして僕個人にとっては、
大牟禮杜氏はまさに「原点」を築いてくださった御方なので
今回のことは本当に嬉しかったです。
とても嬉しい出来事だったのでこの気持ちに身を任せ
僕なりの言い方と解釈で今回のことをまとめてみました。
受賞理由
受賞理由としては、
本格派芋焼酎からフルーティーな香りですっきり飲みやすい若者向けの芋焼酎まで自在に造り分ける卓越した技能を有する
という項目がありました。
確かにそうですね。
大海酒造さんの焼酎は真の芋焼酎好きな方から焼酎初心者の方まで満足して頂けるラインナップが揃っています。
特に初心者層の方に対して大海酒造さんの焼酎で(お客様のご満足という点で)助けられた飲食店員は少なくないはずです。
この評価は大牟禮杜氏のまさに技術を象徴しているのではないかと思いました。
僕が想う大牟禮杜氏のすごさ
僕は昔も今もこれからも大牟禮杜氏のことをずっと尊敬しています。
大学を出て、当時僕は本格焼酎200種類を取り扱う居酒屋に就職していました。
週一回の休みの日には朝から図書館に行き一日中、焼酎の勉強をしていました。
焼酎の歴史、製造方法、麹菌について、薩摩芋や麦といった原料について、醸造学に至るまでありとあらゆる焼酎に関する勉強をしていました。
勤務の日は1日3種と決め、テイスティングをし、その特徴をこまめに記録し、
少しずつレパートリーを増やしていきました。
こんな生活を半年以上続けていると商品知識という点ではなかなかのものが出来上がりまして、
正直言って天狗になっていたわけです(笑)
最初は200種類の多さにビビっていたくせに、
その頃には「こんなのちょっと真面目に勉強すれば余裕でしょ」といった感じでお客様にもスタッフにも流暢に焼酎の説明をしていました。
そんなある日、
本屋で本格焼酎に関する雑誌を立ち読みしていたところ大牟禮杜氏のインタビュー記事を目にしました。
大げさではなく、ここが僕の人生のターニングポイントだったと今でも思っています。
そこにはこう書かれていました。
焼酎造りにおいて手が空いたときは契約農家さんの畑に出向きさつまいも作りを手伝う。
農家さんの気持ちがわからないでいい芋焼酎は造れない。
この瞬間、全身の血が沸き立つような感覚になったのを覚えています。
大切なことを何もわかっていなかった自分に気付かされたのです。
一番大切なこと、
それは造り手さんの気持ちです。
どんな想いで一本の焼酎を造っているのかということが何もわかっていなかったのです。
それで本当にお客様にいいご案内ができるのか、いや、できない…。
ここが紛れもない、僕の原点でした。
そこから水を得た魚のように蔵元さんとコンタクトを取ることに注力しました。
そして11年前の11月1日、自身のお店を始めることになり、
100人のお客様に本格焼酎の造り手さんの想いを伝えるお店
という目標を掲げ、店名は「百伝」と命名しました。
大牟禮杜氏のすごさについてが本題なのに昔話が過ぎましたね…。
僕が想う杜氏のすごさは、
常に支えてくれる人の立場に立ち、
その人達の気持ちを理解しようと行動し続けてこられたことにあると思います。
それを象徴するかの如く、
大海酒造さんの焼酎の裏には大牟禮杜氏と契約農家さんの
畑で撮られた写真が張られています。
杜氏の功績は技術だけではなく、その根本にある人としての素晴らしさにもあると僕は思っています。
![](https://shochu-susume.com/wp-content/uploads/2021/11/IMG-1483-scaled.jpg)
最後に
学生時代、僕はずっとテニスをしていました。
中学のときの顧問の先生の言葉は今でも胸に刻まれています。
技術は心を越えない
あのとき既に人生における大切なことを教えて頂けていたんだと思わされます。
当たり前の話ですが、
本格焼酎は「人」が造っています。
飲食の現場ではどうしたって「味」の説明が求められます。
もちろん僕の仕事はそれにお応えするため、
持っている知識でしっかりとご案内します。
ですが、僕の真の目的はその奥にある、
香りや味じゃない何か
をお伝えすることなんです。
現場ではお客様が求めるモノが常に優先されるので
これを100人の方にお伝えすることってそんな簡単じゃないです。
11年百伝をやっていますがまだ100人に到達したとは思っていません。
コツコツやっていきます。
そして本当に目標通り100人に到達したとき、
世の中に何かしらの変化があるんじゃないかと
僕は本気で考えています。
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