前々回、麦焼酎について記載しました。
長崎県の壱岐、大分県、宮崎県、東京都の伊豆諸島と4つの地域に分け、麦焼酎をご説明しました。
そこでは麦焼酎の全体をお話したたったので、大きく4つに区分けしましたが、他県でも思わずうまい!と言ってしまう麦焼酎はあります。あのとき発散できなかった想いを今回は存分に出していこうと思います!!
福岡県、西吉田酒造さん。
今回はここの蔵元さんをピックアップします。
是非、最後までお付き合いくださいませ (>_<)
文面から伝わる誠実な想い
今から7年前に、ここ西吉田酒造さんにお手紙を書きました。
内容としましては ❝ 一本の焼酎にかける御社の想いを教えてください ❞ というものでした。
一ヶ月経たないうちに吉田社長から返信を頂きました。

ここにアップした写真で伝わるでしょうか?
とてもきれいな字です。
もちろん僕も自身の焼酎に対する想いを気持ちを込めて丁寧に綴りました。しかし、吉田社長からのお手紙には何と言いますか、ものすごいパワーを感じました。焼酎に対する想いもさることながら、会社に対しても、愛飲される方に対しても、責任という確固たるものが秘められているように僕は受け取りました。
そして、わざわざ筆ペンで一字一字丁寧に書き上げられた3枚の手紙に、僕に対する誠意も感じ、本当に感謝したのを覚えています。
実はまだ吉田社長はおろか、西吉田酒造さんのどなたともお会いしたことはありません。
ですが、これからご紹介するこの上なく美味しい麦焼酎とこの手紙から、僕にとっては造り手さん達の熱が感じられてなりません。
頂いたお手紙には、当時僕が経営していたお店で取り扱っていた「初潮(はつしお)」「釈云麦(じゃくうんばく)」の2本についてのご説明が丁寧に記載されていました。
そして、最後の1枚には以下のように書かれていました。(原文ママ)
私ども西吉田酒造では、本格麦焼酎の本物の魅力と、その味わいの広い可能性に賭け、日々、よりおいしい焼酎とはどんな焼酎だろうと自問自答しながらもの造りにいそしんでおりますが、なかなか至っていないという思いもございます。
もっとより良いもの造りをめざして日々努力してまいる所存ですので、ご指導ご鞭撻を賜り、今後ともどうぞよろしくお願い致します
この文章を僕は今までに何回読み返したかわかりません。
良い時も悪い時もこの手紙を開き、自分自身を戒めていました。
お客さんに対して、もっといいご案内があるんじゃないか、もっとわかりやすい説明はできないものか、焼酎に興味を持って頂くには、もっともっと…。
西吉田酒造さんに恥じない仕事をしよう。この気持ちは7年前と今と何ひとつ変わっていません。
おすすめ焼酎
1.つくし(白ラベル)(黒ラベル)
西吉田酒造さんのレギュラー酒はこの「つくし」となります。
白ラベルは減圧蒸留となり、黒ラベルは常圧蒸留となるため、味わいは大きく異なります。
白ラベルの方は、減圧蒸留の特徴通りの軽快な味わいとなり、お刺身や冷菜などに合わせやすい麦焼酎となり、ロックもしくは濃いめの水割りにして頂くことでポテンシャルが発揮されます。これからの季節にぴったりの焼酎ですね。
黒ラベルの方は、白ラベルと比べるとやや重厚感はありますが、下記に記載する焼酎と比べると優しい麦焼酎という印象を受けると思います。
飲み方は濃いめのお湯割りがベストだと思います。お湯割りにすることでより香りが立ち、後味にコクが加算されるように感じます。
合わせる料理は、焼き魚など、香ばしさを感じる料理との相性が抜群です。
2.初潮(はつしお)
サービス業において、お客様の需要通りのお応えをすることが必ずしもいいサービスというわけでもなかったりします。
焼酎がメインの飲食店ではよく、❝ 兼八ありますか? ❞ と言われることがありますが、そんなお客様に僕はこの「初潮」をご案内していました。お客様の中の麦焼酎の世界を広げて差し上げたい、数々の麦焼酎を飲んできた僕だからこそご案内できる焼酎がある、そんな気持ちから「初潮」をお客様にご提案していました。
次第にお客様にとって ❝ いつもの麦焼酎 ❞ という形で重宝して頂くようになり、やがては ❝ 他の麦焼酎も飲んでみたい ❞ と言って頂くようになりました。「初潮」はそれくらいポテンシャルの高い焼酎だということです。
味わいの説明に関しては、吉田社長のお手紙をそのまま引用させて頂きます。
❝ はだか麦という素材の良さである独特の甘さを引き出すため、じっくりと醸したもろみを常圧蒸留した本格焼酎です。もろみが十分に加熱されることで、より深みのある甘い香りが生じ、独特な風合いが生まれています ❞
合わせる料理は、鯖の味噌煮など味噌を使った料理との相性がいいです。是非、お試し頂きたいです。
3.釈云麦(じゃくうんばく)
かつて、麦焼酎では白麹を用いて醸すというのが一般的と言われていました。優しい味わいの麦焼酎を目指すために白麹が選ばれていたのです。
そんな中「釈云麦」が颯爽と現れたと昔お世話になっていた酒屋さんに聞いたことがあります。
黒麹、無濾過。
麦焼酎では今でもそんなに多いタイプの焼酎ではありませんが、当時は特に珍しいタイプの焼酎として業界では注目されたようでした。
無濾過ということもあり、お湯割りをおすすめします。
合わせる料理は、焼き鳥(タレ)、豚の角煮などお味のしっかりした肉料理がいいと思います。
正直申し上げて、この「釈云麦」は麦焼酎のバイブルとして考えて頂きたくないなというのが僕の個人的な意見です。
誤解のないように捉えてください。他の麦焼酎とは一線を画すインパクトのあるしっかりとしたお味の麦焼酎、唯一無二の個性的な麦焼酎ということです。
4.黒騎士(くろきし)

特約店にて販売される焼酎のため、なかなかお見掛けしない焼酎だと思います。ですが、一度飲んで頂きたいです。
吉田社長は ❝ より良い焼酎を ❞ と言われましたが、これ以上の麦焼酎がほんとにあるのかと思ってしまうくらい素晴らしい焼酎です。
原料となる麦を焙煎することで演出される香ばしい麦の香り。そして古酒をブレンドすることで感じる円やかな熟成感。しつこくない後味のコク。
最初から最後まで、まるで芸術作品を身体で感じているようなひとときを体感できます。
いいか悪いかは別として、お店をやっていたとき、お店にあるはあった焼酎ですが、本当に麦焼酎好きな方にしかご案内していない焼酎でした。いつも料理を一番に見据え、それに合った焼酎をと考えてセレクトしていましたが、この「黒騎士」に関しては焼酎だけ味わってほしいと思ってしまうくらい特別視していたのは正直なところです。
おすすめの飲み方は、ロックもしくは濃いめのお湯割りです。
最後に
僕はその歴史の長さに、焼酎ってすごいなぁと思っています。500年続くものってそう多くないと思うのです。
焼酎の歴史を支えてこられた代表的な方々として、黒瀬杜氏、阿多杜氏、河内源一郎氏と、以前このブログでも言及しました。
もちろん上記の方々だけではなく、焼酎に関わる全ての先人が歴史を築き上げました。
そんな先人達には、西吉田酒造さんが言う ❝ より良い焼酎を ❞ または ❝ より良い麹菌を ❞ といった常に上を目指す心があったのだと思います。
人は当然のように ❝ モノの質 ❞ でその良し悪しを判断します。これは仕方のないことです。どれだけ崇高な想いの下、商品を造っても人に必要とされなければ努力が足りないと言われて然るべきだと思います。
ですが、ご自身が納得したもの、焼酎でしたら美味しいなと思うものに出会ったら、是非、造り手さんにも目を向けてみてください。本格焼酎の場合ですとそれが同じ日本人です。この日本にこんな想いでもの造りをしている人がいたんだという発見や感動がきっとあります。
これからも皆様に伝えていきます。本格焼酎の限りない魅力のひとつに造り手さんという人達がいらっしゃることを。
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