芋臭い焼酎という表現の撤廃 ~焼酎唎酒師の願い~

 

❝ 芋臭い焼酎お願いします ❞

飲食店の現場ではこのようにリクエストされるお客様は少なくありませんでした。

そういうとき、僕の場合は、〝 芋臭いっていうのはもう今の焼酎にはないんですが、さつま芋の風味がしっかり感じられる焼酎でしたら… 〟と言い、2、3本お店のラインナップから引っ張ってきてご案内していました。

そしてそのお客様との関係が詰められたとき、なぜ今の焼酎には芋臭い焼酎がないのか、その理由を付け加えるようにお話していました。

でも、お客さんも悪気があって芋臭いと表現しているわけではないんです。そう表現することが蔓延してしまっているだけなんですよ。

ということで、
いい加減、この表現の仕方に終止符を打った方がいいと思っています。

焼酎とは、臭いのを我慢して飲むものでもないし、また、実際に臭いわけではありません。
芋焼酎を表現する言葉として適格ではないので、撤廃すべきだと僕は考えています。

 

芋焼酎の香りが向上した要因

 

確かに、実際に昔は独特の香りを放つ焼酎があったようです。

しかし、今で出回っている焼酎がそう感じない原因として「濾過技術の向上」と「さつま芋の品質向上」この2点が僕は大きな変化ではないかと考えています。

 

⑴ 濾過技術の向上によるフーゼル油の除去

 

蒸留後の焼酎にはフーゼル油という醸造の過程で生成される油状物質があります。これがかつての焼酎にあった独特な香りの根源です。

この油分、何が問題かと言いますと、空気に触れることで酸化を招き、焼酎の香りが著しく悪化するだけではなく、品質そのものを劣化へと導くのです。例えるならガソリンのような油臭がします。

そこで濾過を行います。
今は様々な方法の濾過が存在します。ここでは割愛しますが、この濾過技術によるフーゼル油の除去こそが、焼酎の香り、さらには焼酎自体の品質向上に大きな役割を果たしているのです。

このように、かつての焼酎は酸化されつつあるフーゼル油の油臭が異臭として感じられていたと考えられます。つまり、これは芋焼酎に限ったことではないのです。麦焼酎も米焼酎も油臭を放つ焼酎は存在するということになります。

ここでちょっと付け加えておきたいことがあります。
上記で説明した油分ですが、これ、取り過ぎもよろしくないんです。

上記では油状成分をフーゼル油と一言で表現しましたが、それとは本来別の成分である高級脂肪酸エチルエステルという原料由来の脂質が存在しており、これは焼酎の大切な旨味成分でもあります。また、フーゼル油全体としても微量含まれていると香味成分として役立ちます。

ゆえに、りそして旨みを残しつつ行う濾過技術が蔵元さんの腕の見せ所となります。

※「無濾過」と表記された焼酎は?と疑問に思われた方へ。
非常に大切にして頂きたい疑問です。蔵元さんに伺うのがベストだと思いますが、僕でよろしければ丁寧にお応えしますのでコメントください!!今回のテーマから少し離れますのでここではこのまま進みます。

 

⑵ さつま芋の品質向上

 

そして、さつま芋自体の問題としては、鮮度の問題です。

僕が実際に出逢い、お話させて頂いた蔵元さんにはこれは当てはまりませんが、昔、一部の焼酎では冷凍保存されたさつま芋が使われていたそうです。これは非常によろしくないことで、低温障害を受けたさつま芋で焼酎を仕込むと腐敗臭の原因となります。

さつま芋は8℃以下の保存では低温障害が生じることがわかっています。原因は、ミトコンドリア内膜が損傷を受けて呼吸活性が低下し、病原菌への感受性が増大するためです。(ミトコンドリアとは細胞の働きをサポートする生命維持に不可欠な組織)

以前、冷凍のさつま芋についてご意見を頂くため、とある蔵元の杜氏さんに質問したところ、この造りを行う蔵元さんを真っ向から否定していました。「うちの蔵が冷凍のさつま芋を使うようになったら、杜氏を辞める」ともおっしゃっていました。
非常に気まずい空気になったのであわてて違う話題に切り替えたのを覚えています…。

また、さつま芋は傷を受けると抗菌作用の強い物質を分泌し、負傷部分をコルク質で覆う性質があります。ここで分泌される物質が焼酎にしたとき、苦み、臭みの原因となり、著しく品質を低下させます。

交通網の整理により掘りたてで新鮮なさつま芋が輸送できるようになったことに加え、負傷部分を見逃さずその除去が丁寧に行われるようになったことも香りが向上した要因となります。
事実、この工程を何度か体験させて頂いたことがありましたが、作業にあたる皆さんの目は真剣そのものでした。

 

 

このように今日の焼酎は、造り手さんの ❝ より良い焼酎を ❞ というゆるぎない目標と毎シーズン行う真剣な仕込みにより、確実に向上しているのです。

 

さつま芋それぞれの固有の香り

 

黄金千貫というさつま芋が芋焼酎ではメジャーな品種ですが、色々な品種のさつま芋も芋焼酎で使用されています。

香りという点において特に顕著に表れているさつま芋の代表的なところを記載しておきます。

 

⑴ アヤムラサキ 

 

例:「くじら 綾紫」  (大海酒造)
  「宝山綾紫全量」(西酒造)

 

まるで赤ワインのようなフローラルでエレガントな香りを放ち、その存在感は封を開けた瞬間から感じられます。水割り(冷たい状態)でも十分に香りを楽しむことができます。
(このアヤムラサキなどの紫芋系の焼酎を〝 つわり香 〟と表現されるテイスターがいますが、この表現も個人的には賛同できません)

 

⑵ ジョイホワイト 

 

例:「ひとり歩き」(古澤醸造)
  「夢鏡」   (上園酒造)

 

オロブランコ(スウィーティー)のような柑橘系の果物を想像させる爽やかな香りがします。
飲食店で働いていたときはこの品種の焼酎がとても人気でした。

また、香味成分として最近注目されているのは、ジョイホワイトにも多く含まれています〝 リナロール 〟という成分です。
これは、マスカットワインなどに多く含まれる香気で、もちろん多ければ多い方がいいという問題ではないのですが、このリナロールを多く含んだ品種の芋焼酎を最近よく見かけるようになりました。その品種名は「ハマコマチ」です。

 

⑶ ハマコマチ

 

例:「橙華」(大石酒造)

 

トロピカルフルーツのような香りとでも言いましょうか。ジョイホワイトの爽やかさに加え、甘さを思わせる香りが特徴的です。
上記以外にもハマコマチを使用した焼酎はいろいろありますが、僕は大石酒造さんの「橙華」を皆様にはお勧めします。

 

最後に

 

鹿児島県は阿久根市の蔵元、鹿児島酒造さんの弓場杜氏とお話させて頂いたときの内容です。
弓場杜氏は黒瀬総杜氏のもと、18歳のときから35年間、鹿児島酒造さんで焼酎を造られていますが、杜氏が蔵で働き始めた頃は蔵の前を女学生達が鼻をつまんで通っていたそうです。これを見るのが嫌だったとおっしゃっていました。〝 いつか女性にも芋焼酎を好んで頂ける時代がきてほしい…  〟と思っていたそうです。

もちろん、今はそんなことはないとおっしゃっています。
事実、初めて鹿児島酒造さんを見学させて頂いたとき、まるでスイートポテトを思わせるようないい香りが蔵の外でも感じられました。
これは僕の予想ですが、今も昔も真面目で丁寧な造りをされるここの蔵元さんに限っては、蔵の香りに違いなどなかったはずです。ですが、芋焼酎全般に対する当時のイメージというのでしょうか、そういうものが原因だったのではないかと思います。

かつてのお話をされる杜氏のお顔はとても悲しそうで、2000年を超えたあたりから焼酎と出逢った僕には想像できない時代を経験されたんだなと思い、お返しする言葉がすぐには出てきませんでした。

今、本格焼酎は女性も好んで飲まれている方は多いです。弓場杜氏がおっしゃっていたことは現実になりました。
もちろん、杜氏がされてこられた努力と同じベクトルで考えているわけではありませんが、今回テーマとして挙げた〝 芋臭い焼酎という表現の撤廃 〟もいつか現実のものになると本気で思っています。

僕自身、それが現実になるよう、これから本格焼酎がもっと若い方にも興味を持って頂けるような提案、そして、活動をしていく中で、芋焼酎がプラスの要素を含んだ言葉で語られる世の中を作っていきたいと強く思っています。

 

 

追伸:現在でも「昔ながらの芋臭い焼酎」とか「日本一芋臭い焼酎」というキャッチフレーズの焼酎をお見掛けします。僕はこれらの焼酎を否定はしません。でも一言感想を言わせて頂くと、別に臭くありません。さつま芋の個性がダイレクトに伝わるとても美味しい焼酎だと言いたいです。


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